働き方改革の推進と新型コロナウイルスの流行の影響により、新しい働き方が世間に浸透してきています。企業ごとにさまざまな取り組みを行っている今、注目を集めている働き方が「ハイブリッドワーク」です。

本記事ではハイブリッドワークの概要や、メリット・デメリット、導入方法、導入を成功させるための条件をご紹介します。多様性が求められるようになり、今後新しい働き方のニーズはどんどん増えてくると予想されます。導入を検討している方は、この記事を参考にして、ハイブリッドワークへの理解を深めましょう。


<目次>

■ ハイブリッドワークとは

ハイブリッドワークとは、従業員が個々の状況や事情に合わせて、オフィスワークとリモートワーク・テレワークを組み合わせる新しいワークスタイルです。ハイブリッドワークなら、週1日だけ出勤し、残りの4日間は自宅やコワーキングオフィス、シェアオフィスなどで働くなど、柔軟な働き方が可能となります。

新型コロナウイルスの流行をきっかけに、テレワークを導入した企業も多いでしょう。ただしテレワークが普及したことで、十分なコミュニケーションが取れない、従業員の健康状態に不安が生じる、業務効率が悪いなどのデメリットも浮き彫りになってきているようです。

そこでテレワークのメリットを残しつつ、デメリットをカバーできる働き方として注目されているのが、ハイブリッドワークです。ハイブリッドワークを導入する企業は増えつつあり、今後は新しい働き方の主流スタイルとして、さらに浸透していくと考えられます。

■ リモートワーク・テレワークとの違い

リモートワーク・テレワークは、自社オフィスに出社せずに自宅やコワーキングスペース、シェアオフィスなどで働くことを指しています。一方、前述したとおり、ハイブリッドワークはオフィスワークとリモートワーク・テレワークを組み合わせ、柔軟に働く場所を選べる働き方です。

リモートワーク・テレワークも多様な働き方を実現する働き方ですが、ハイブリッドワークの方が働く場所の選択肢が多く、自由度の高い働き方といえるでしょう。

なお自社オフィス以外で働くことをリモートワークと呼ぶかテレワークと呼ぶかは企業によって変りますが、厳密にいえば、リモートワークは「出社せずに離れた場所で働くこと」、テレワークは「ICT(情報通信技術)を活用して、時間や場所にとらわれずに働くこと」を指しています。どちらも自社オフィス以外で働くことに変わりなく、同義として使われているケースが多いです。本記事では、以降は「テレワーク」で統一します。

■ ハイブリッドワークのメリット

次に、ハイブリッドワークの5つのメリットを見ていきましょう。

● 1.オフィスの有効活用

ハイブリッドワークを導入した場合、出社する従業員もいれば自宅などで働く従業員もいる状況になり得ます。常に全従業員が出社している状態よりもオフィススペースに余裕が生まれ、空いたスペースを有効活用できるのが、ハイブリッドワークのメリットです。

固定のデスクを設けないフリーアドレスにし、余ったスペースをリフレッシュスペースやマグネットスペース(※1)にすることもできます。従業員がより働きやすいレイアウトを作れるので、業務効率アップが期待できるでしょう。

また出社する従業員にとって必要なスペースだけを確保できる、小規模なオフィスに縮小移転するという選択肢も出てきます。無駄を省いたオフィスを構えることで、家賃にかかるコストが削減でき、福利厚生の充実や設備の充実などに予算を割くことができるでしょう。

(※1):コピー機の周りや給湯室など、休息や用事などで「人が自然と集まってくる空間」のこと

● 2.生産性の向上

働き方が柔軟に選べるハイブリッドワークは、生産性の向上も期待できる働き方といえます。一人ひとりの性格や状況、抱えている業務内容によって、最適な働き方は異なるはずです。一人で行う作業は自宅の方が効率がよいという従業員でも、自宅にはない設備が必要な業務や、プロジェクトメンバーと顔を合わせた方が効率よく進められる業務を担当することもあるでしょう。

必要に応じてオフィスと自宅などを使い分けられるハイブリッドワークなら、状況や業務内容によって臨機応変に働けるので、生産性の向上が期待できます。子育て中・介護中などの従業員も、働く場所が限定されていることによる制約がなくなり、柔軟な働き方が可能になるでしょう。

● 3.従業員のモチベーションアップ

自分で働く場所を選べるハイブリッドワークは、固定された働き方よりも働きやすさが向上する傾向にあります。働きやすくなったと感じた従業員は、仕事へのモチベーションも高まるでしょう。

テレワークでは、通勤のストレスがなくなるなどのメリットがあるものの、プライベートとのオン・オフが切り替えにくいという課題がありました。その点、週に数回出社するハイブリッドワークならオン・オフの切り替えが容易になり、ワークライフバランスの改善効果も期待できます。テレワークで同僚とのコミュニケーションが減り、ストレスを感じていた従業員も、適度に出社することでストレスを発散できるはずです。

また子育て中・介護中などで思うように働けなかった人も、ハイブリッドワークなら理想とする働き方が実現しやすくなるでしょう。所属企業への満足度を示す社内エンゲージメントの向上も期待できます。

● 4.優秀な人材の確保

ハイブリッドワークの導入は、優秀な人材の確保にもつながる可能性があります。

個々の状況や業務に合わせて自由な働き方ができる制度を導入していることは、企業の大きな強みといえます。自分らしい働き方ができるハイブリッドワークに魅力を感じる人は多いため、就職・転職希望者が増え、優秀な人材が確保しやすくなるでしょう。

またハイブリッドワークの導入によって社内エンゲージメントが高い状態となれば、入社後も不満を持ち難くなるので、新規採用した従業員が定着しやすくなることも期待できます。人材不足や離職率の高さの課題を抱えている企業にとっては、ハイブリッドワークの導入が課題解決の糸口となるかもしれません。

● 5.テレワークで課題だったコミュニケーション不足の解消

ハイブリッドワークを導入すると、テレワークで課題となったコミュニケーション不足の解消につながり、円滑なコミュニケーションが行いやすくなります。

チャットやオンライン会議でしかコミュニケーションを取ることができないテレワークでは、コミュニケーションの難しさが大きな課題となっている企業も多いようです。相手の感情が読み取りづらく、スムーズなコミュニケーションができないという経験をした方もいるでしょう。

ハイブリッドワークなら、従業員同士で出社日を合わせることで、顔を合わせてコミュニケーションを取ることが可能です。直接スムーズなやりとりができ、従業員の結束力も高まるでしょう。対面して話をする機会を持つことで、デジタルでの会話だけでは生まれない新たなアイデアが創出される可能性もあります。

■ ハイブリッドワークのデメリット

メリットの多いハイブリッドワークですが、デメリットも存在します。ハイブリッドワークの導入を検討しているのなら、デメリットを把握し、どのように対処するかを考えておきましょう。

● 勤怠管理が複雑

ハイブリッドワークのデメリットとして、勤怠管理が複雑になり、手間がかかってしまうことが挙げられます。

勤怠管理の難しさは、テレワークでも多くの企業が抱えている問題といえます。従業員がさまざまな場所で働くことになるハイブリッドワークでは、さらにその管理が複雑になるでしょう。オフィスと自宅などの勤怠管理を全て行わなければならないので、手間が増える傾向にあり、ミスも生じやすくなってしまう可能性があります。

勤怠管理を効率的に行うには、勤怠管理ツールの導入などを検討するのがおすすめです。

● 従業員の評価制度などの制度の管理

従業員評価制度をはじめとした制度の管理が難しくなることも、ハイブリッドワークのデメリットといえます。

オフィスで働く従業員もいれば、自宅でも働く従業員もいるハイブリッドワークの場合、従来のオフィスワークを前提に作られた評価制度では、正当な評価が難しくなりがちです。従来の評価制度では平等に評価できず、従業員のモチベーションが下がってしまうリスクも考えられます。

ハイブリッドワークを導入するのなら、オフィスワークの評価制度に加え、自宅などで働く場合の評価制度を明確にする必要があるでしょう。また、働く場所にとらわれない新たな評価制度を設けるという選択肢もあります。

● コミュニケーション上の問題

テレワークで課題となっていたコミュニケーション不足を解消できるハイブリッドワークですが、出社の日が多い従業員と自宅などで働く日が多い従業員では、コミュニケーションの密度に差が生じてしまう可能性があります。自宅などで働いている従業員に対する情報共有が十分に行えず、ミスコミュニケーションから大きなトラブルに発展してしまうケースも考えられるでしょう。

こういったコミュニケーション上の問題を解消するには、チャットツール・Web会議システムの導入を行い、どこで働いていてもできるだけやりとりしやすい環境を整備することをおすすめします。情報格差が生まれないよう、情報共有のルールを明確にしておくのも大切なことといえます。

■ ハイブリッドワークの導入方法

ハイブリッドワークの導入は、大きく3つのステップに分けられます。スムーズな運用ができるよう、ポイントを押さえた上で導入を進めましょう。

● 1.オフィス環境の設備

ハイブリッドワークを導入するためには、まずはハイブリッドワークに適した環境整備を行うとよいです。オフィスワークが主流だった企業なら、フリーアドレスへのレイアウト変更でスペースを効率的に利用できるはずです。

また、出社している従業員と自宅などで働いている従業員がミーティングをしやすい環境も整えておくと、より働きやすくなるはずです。個室の防音ブースを設置すれば、他の従業員の邪魔になったり重要な会話が漏えいするなどの心配を減らせるでしょう。

ノートパソコンなど端末の購入、勤怠管理や情報共有のためのツールやシステム導入なども場合によっては必要となります。従業員がより快適に働けるよう、備品購入補助費の支給や、シェアオフィスやレンタルオフィスの手配なども検討するとよいでしょう。

● 2.ルール・制度の制定

次にハイブリッドワークの導入にあたって、ルールや制度を新たに制定しておくことをおすすめします。以下のようなルールを明確にしましょう。

● 自宅などで働くことを選択できる日数・時間
● コミュニケーション方法
● 働く場所の範囲やセキュリティ
● 勤務予定の共有方法や勤怠管理
● 緊急時の対応方法 など

最初のうちは最低限のルールを設定しておき、従業員の声を吸い上げながら適宜改善すると、より実用性の高いルールに近づけるはずです。またこのタイミングで、従業員の評価制度も見直し、ハイブリッドワークの導入までに社内への周知を徹底しておきましょう。テレワーク手当や通勤手当の扱いなども、見直しておくとよいかもしれません。

● 3.セキュリティ対策

さまざまな場所で働くことを認めるハイブリッドワークは、セキュリティ対策の徹底も欠かせない項目といえます。社内のセキュリティルールを明確化し、研修を行って全従業員のITリテラシーを高める努力が求められるでしょう。必要に応じて、ウイルス対策ソフトの導入や従業員に貸与するデバイスの管理体制の整備を行うなど、情報漏えいを起こさないよう、細心の注意を払うようにしましょう。

■ ハイブリッドワークの成功条件

ハイブリッドワークを成功させ、メリットを享受するために、これからご紹介する2点を押さえておきましょう。

● 1.情報格差をなくすための業務のオンライン化

従業員によって働く場所が異なるハイブリッドワークは、前述したとおり、情報格差が生まれやすいです。ミスを誘発する原因になってしまうため、業務をオンラインで見える化し、どこにいても必要な情報にアクセスできるようにしておきましょう。クラウドシステムを活用すれば、場所に関わらず、誰でも必要な情報にアクセスできるはずです。業務連絡方法としてFAXを活用している企業は、ペーパーレスに切り替えることをおすすめします。

● 2.コミュニケーションの活性化を促す場を作る

ハイブリッドワークを成功させるためには、意図的にコミュニケーションの活性化を促す場所を設けましょう。

例えば、テレワークの日の従業員も参加できる朝礼を毎朝行う、オンラインを使ったイベントを開催する、部署やチームごとに出社日を設定し定期的に顔を合わせられるようにするといった方法が挙げられます。また対面で行うイベントの開催や、福利厚生として部署での飲み会に手当を出すなど、従業員同士のコミュニケーションをサポートする方法を工夫してみるのもおすすめです。

■ ハイブリッドワークについて導入企業の声

ハイブリッドワークを実際に導入した企業は、どのように感じているのでしょうか。


サイトソリューション事業などを展開する株式会社Kaizen Platformは、2013年に創業して以来、テレワークを実施している企業です。テレワークを実施する中で、入社した従業員の育成や企業文化作りには出社が必要だと感じるようになり、ハイブリッドワークを導入しています。ハイブリッドワークを成功させるためには、自由な働き方が選べるからこそ、企業として従業員にどのようなケアをするか、画一的に実施していたことは本当に正しいのかを見直すことが大切だと感じているようです。(※2)


(※2)参考:H¹O.「ワークプレイス最適化の時代へ。新たな働き方を支援する、野村不動産のオフィスポートフォリオ」.

https://h1o-web.com/cms/html/column/46.html, (参照 2023-05-24)

■ まとめ

本記事ではハイブリッドワークの概要や、メリット・デメリット、導入方法、導入のポイントなどをご紹介しました。ハイブリッドワークはオフィスワークとテレワーク両方のメリットを生かせる新しい働き方です。導入する際は、デメリットや課題を踏まえて対策を講じ、スムーズな運用を目指しましょう。

野村不動産のサービスオフィス・H¹O(エイチワンオー)は、オフィスにかかるコストを削減しながらスタイリッシュな空間で企業のブランド力を高められる、新しい形のオフィスです。ハイブリッドワークの導入でオフィス移転をお考えの方は、ぜひH¹Oをご検討くださいませ。

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